外壁塗装工事における 「下塗り」の重要性と役割について
今回の記事では、外壁塗装工事における下塗りの重要性と役割について説明します。
外壁塗装工事においては、一番最後に塗布され仕上がりの色となる上塗り塗料のことを注意深く気にされている方は多いと思います。また、下塗りを省いたらその分費用が安くなるのではないか、下塗りは必要ないのではないか、とお思いの方もおられるのではないでしょうか。
結論から言うと、下塗り・中塗り・上塗りで構成される塗膜の層の中では、下塗りが1番重要な層です。
下塗り塗料を使わずに中塗り・上塗り塗料を塗ってしまうと、見た目の仕上がりに影響するだけではなく、塗膜が剥がれてくるなどの不具合が起きる可能性もあります。下塗りには様々な不具合を防止する役割があり、外壁塗装工事において非常に重要な工程といえますので、外壁塗装工事を検討されている方は必見の内容となります。
下塗りの重要性と役割
外壁塗装工事を施工する場合、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本となっており、下塗りは塗装の中で最初に使われる塗料です。
下塗りは、塗膜全体を下地に密着させる土台の役目もあり、表面にいくら良いモノ(上塗り)を使っても、土台が崩れれば元も子もない結果となってしまいますので、以下からは下塗りの重要性とその役割を詳しく説明していきます。
▷外壁塗装は3回塗りが基本!下塗り・中塗り・上塗りの違いとその役割について
密着力の確保
下塗りの持つ大きな役割の1つが密着力の向上です。下塗りは下地と上塗りの間に位置する層で、下地と上塗りのどちらに対しても接着剤のような役目がある「シーラー」という下塗り塗料があります。
「シーラー」
シーラーは大きく分けて2つの種類、油性シーラーと水性シーラーがあり、仕上塗料が溶剤塗料である場合は油性シーラー、仕上塗料が水性塗料の場合は水性シーラーといったように塗り重ねる塗料の性質に合わせる必要があります。その他にも水性シーラーは作業中の臭いが少なく引火の危険もないため安全性は高いですが、下地への浸透性が油性よりも劣るので、比較的劣化が少ない下地に使用することが適しています。逆に下地の劣化が激しい場合は油性のシーラーが適しています。
シーラーは塗装面の細かいひび割れの補修効果や、中塗り上塗りが下地に吸い込まれるのを防ぐ効果もあり、コンクリート・石膏ボード・モルタルなど、様々な種類の下地に塗布することができますが、金属の下地に対しては防錆効果のあるサビ止め塗料が多く使用されます。
▷サビ止め塗料とは?必要性から池本塗装のおススメ塗料をご紹介
塗膜の性能の向上
シーラーで補修できなかったひび割れや、旧塗膜の劣化部分に段差がある場合などは、「フィーラー」「サーフ」「サフェーサー」という下塗り塗料を塗装し、下塗り層の補強を行います。
下塗りが1回塗りの場合はシーラーが塗装されますが、下地の劣化が激しい場合はシーラーの上からフィーラー・サーフ・サフェーサー材を下塗り2回目として塗装することで、下塗りに必要な密着力・膜厚を確保することができます。
下塗りに求められる性能が確保できていることが、塗膜全体の機能の向上には不可欠であり、下塗り層の性能が充分でない場合は、上塗りにいくら性能の高い塗料を塗っても、それを支える土台がないといえるので、塗膜全体の機能が失われていくのも早くなります。
下地と塗膜全体の防錆力と密着力を有し、且つその耐久力を長い時間維持するためには、下塗りの出来に左右される部分が多いのです。
吸い込み防止
下塗り塗装は、傷んだ外壁への上塗り塗料の吸い込みすぎを防止する役割も果たします。
10年以上経った建物の外壁には、大小さまざまなひび割れやキズがありますが、荒れてしまった外壁の表面は、塗料をスポンジのように大量に吸い込んでしまうので、上塗り塗料本来の機能を十分に発揮させ、長持ちさせるために必要な塗膜厚が確保出来なくなってしまいます。
その結果、塗料表面の色や艶にムラが発生してしまい、美観が損なわれてしまうばかりか、塗装が薄くなってしまっている箇所に不具合が起きてしまうこともあります。
また、下塗り塗料の使用料が不十分な場合も、下塗り塗料が外壁に吸い込まれて薄くなってしまい、上塗り塗料が密着しないなどの不具合が発生してしまいます。そのため外壁や屋根の劣化が激しい場合は、下塗り塗装を2回行う場合があります。
下塗り塗装をしっかり行なうことで、傷んだ外壁に塗料が吸い込まれてしまうのを防ぐことができるので、上塗り塗料が外壁に吸い込まれる事がなく、色や艶のムラがなくなり綺麗な仕上がりにすることが可能となります。
吸い込みが止まらない場合、塗料を追加で発注することもあり、余計な費用が掛かってしまいます。そのため、下塗りで塗料が吸い込みすぎないように止めておくことは、とても重要な役割なのです。
仕上がりの影響
下塗り塗料は、すでに塗られている外壁色を覆い隠す、隠ぺい性の効果も発揮します。下塗り塗料と上塗り塗料を適切に選定することで、思い通りの色を塗布することが可能です。
黒色などの濃い色の塗料から、淡い色の塗料への塗り替えといった極端な色の変化の時に、下塗りを塗装せずに上塗りを塗装すると、元の下地の色が透けてムラが出来てしまい、思った通りの色にならない場合があります。そういった場合には、白色系の下塗り塗料を使って下地の色を少しでも隠すことで発色が良くなり、より綺麗な仕上がりにすることができます。
このように、下塗りは仕上げを綺麗にするためにも、とても重要な工程といえます。
様々な機能の付加
下塗りには様々な種類があり、素材や状態に合った機能を付加することができます。
例えば、金属性の素材が使われている場所、鋼製の壁であれば下塗りは錆止めを使い、セメントと木材が主材のサイディングであれば、下地の色を隠す為の隠ぺい力が高い下塗り塗料を使ったり、モルタルが下地の場合には、ひび割れなどに強くなる下地補強材を塗布したりします。
他にも、カビの発生を防止する防カビ機能のある塗料や、太陽熱を効果的に反射する遮熱機能、ヘアクラックと呼ばれる小さなヒビがある状態には、下塗りを使ってその傷を埋めたりすることもできます。
塗装を行う建築物が置かれている環境や、建築物の下地や素材に適切な下塗り塗料を選定するためには、専門的な知識と経験が必要となってきます。
▷「下地補修」って何をするの?塗装工事における下地補修の重要性について
下塗りを2回行う
外壁塗装の工程は、下塗り・中塗り・上塗りの順番に塗り重ねる3回塗りが一般的ですが、下塗りを2回塗装して中塗り・上塗りを塗装する4回塗りをする場合もあります。
下塗りを2回塗装する理由としては、主に塗装を行う下地の状況に影響されます。下地の劣化や凹凸が激しい場合に下塗りを2回塗装するのですが2回塗装することでどんなメリットがあるのかを紹介します。
充分な膜厚を確保できる
塗装は外壁を守る為のバリアの役割があり、そのバリアは薄いよりも厚い方がその耐久性能は単純に高くなります。(厚すぎてもデメリットはあります)2回塗りを施工すると、下地の劣化している部分を確実に固めることもでき、表面の凹凸が少ない状態で中塗り・上塗りが塗装されることにより、上塗り後の仕上がりもキレイになります。
チョーキングや旧塗膜の劣化が軽いモノであればシーラーを1回塗装で終える場合もありますが下地の劣化が激しくシーラーだけでは不十分な時や、旧塗膜がザラザラな仕上がりの「リシン塗料」などが旧塗膜の場合は、下塗りを2回塗装することで表面の凹凸がなく平らな面に近づける目的も含め、2回塗りを施工することが多いです。
下地の吸い込みを押さえる
下地に塗装する下塗りは、その下地の劣化が激しい場合などは、塗料の吸い込みも激しくなります。
下地の吸い込みは下塗りの時点で止めておかねばならないもので、中塗りや上塗りが吸い込まれるようでは、密着不足で塗装が剥がれる原因になったり、上塗り後に吸い込みが激しかった部分に色ムラが発生する可能性があります。
特に施工する職人のスキルに差がある場合は、1回塗りでは吸い込みが不十分な箇所が出てきた時それに気付かなかったり、塗り重ね等の対応が不十分になることも考えられますので、職人のスキルになるべく依存せずに、確実に下地の吸収を止め充分な膜厚を確保するという点でも、下塗りの2回塗りは非常に効果的といえます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は塗装工事における、下塗りの重要性と役割を紹介しました。
下塗り塗料は防錆力・耐久性・美観といった塗膜の性能を支える土台であり、塗装する建築物の環境や状況に合わせた機能を付加、向上させることも可能であり、塗装工事を成功させるためには、下塗りが非常に重要な役割を果たしていることが理解していただけたかと思います。
下塗りの役割が果たせていない塗膜は内側からの劣化、外部からのダメージ、いずれにしても健全な塗膜よりも異常が早期に現れることは避けられないと考えておかねばなりません。
実際に外壁塗装工事を依頼する場合は、見た目に大切な上塗り塗料だけではなく、下塗りに関しても、どのような塗料を何回塗るのかといった所を、少しでも気にして貰えればと思います。
また池本塗装では、外壁塗装に関しての様々な疑問・情報についての記事を多数公開しております。
外壁塗装に関して何かわからないことがあればお気軽にご相談ください。
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