外壁塗装におけるコーキング工事とは?役割と重要性を解説
外壁のつなぎ目や窓回りには、「コーキング」と呼ばれる弾力性のあるゴム状の材料が使用されています。
コーキングは、外壁材の防水性能と気密性能を高めるだけでなく、強風や地震などで建物が揺れた際に外壁にかかる衝撃を吸収する緩衝材になり、外壁工事には必須の材料です。
外壁の塗装メンテナンスを検討する際には、このコーキングの劣化度合いも判断して適切な修繕をする必要があります。
本記事ではコーキングの役割と重要性、外壁塗装の方法に応じた最適な修繕方法について解説します。
外壁塗装におけるコーキングとは?
コーキングは英語の「Caulking」のことであり、「詰め物をする」という意味になります。
まずは、コーキングの役割と外壁に使用される箇所について解説します。
外壁にコーキングが使用される箇所
外壁には、次のような箇所にコーキングが使用されています。
コーキングが使用されている箇所は平滑で、素材感が外壁と異なります。
✅外壁と外壁の縦方向のジョイント箇所
✅外壁が屋根軒裏にぶつかる箇所
✅外壁とサッシの周りの隙間
✅換気扇や給気口のフード周り
✅電線などの室内引き込み口
コーキングの施工時には接着剤のように柔らかくベタ付きますが、時間を置くとゴム状に固まり、指で押すと弾力があります。
外壁コーキングの役割
外壁工事におけるコーキングの主な役割は次の3つです。
・外壁の材料と材料をつなぐ充填剤
・雨水から建物を守る防水材
・建物躯体や外壁の動きに追随する緩衝材
外壁材は現場でいくつものパーツを貼り合わせて施工します。多くの外壁材は下から上に向かって重ねて貼るように設計されており、雨水が流れ落ちる際に外壁の裏側に回らないように形状が工夫されています。
その反面、横方向には外壁を重ねることができません。そのジョイント部分が防水上の弱点となるため、コーキング材を充填して止水処理をする必要があるのです。
換気扇や給気口を設置したり、電線などを室内に引き込む際には外壁に穴を開けなければなりません。そのような設備のために開けた穴を通して雨水が室内に入らないように、コーキングを使用して止水処理をします。
また、外壁を一切の隙間なく突き付けて施工してしまうと、地震や強風時に躯体や外壁が動いたときに力の逃げ場がなくなり損傷してしまいます。
適切なスパンごとに緩衝材としてコーキング材を入れることで、外壁材同士の接着を維持しつつ動きに追随し、外壁材に遊びと柔軟性を持たせる役割があります。
★コーキングとシーリングの違い
コーキングと同じような意味で使用される言葉として、「シーリング」があります。シーリングは英語の「Sealing」のことで、「密閉する」という意味合いです。
資材メーカーや設計書・仕様書ではシーリングという名称の方が使用されますが、施工業者や現場の職人間ではコーキングと言う方が通りが良い印象です。とはいえ、どちらの名称を使用しても施工内容に違いはありませんので、さほど気にする必要はないでしょう。
コーキングの種類と寿命は?
コーキングにはその成分の違いによりいくつかの種類があります。
それぞれの特性と寿命についてまとめます。建築工事で使用されるコーキングの種類は、主に次の4つです。
✅アクリル系コーキング
✅シリコン系コーキング
✅ポリウレタン系コーキング
✅変性シリコン系コーキング
アクリル系コーキング
アクリル系コーキングは水性のコーキング材であるため伸びが良い上に硬化が遅く、施工性が非常に良いコーキング材です。
主に内装仕上げの用途に使用されるもので、耐候性や耐久性が低いため外部にはあまり適しません。
40年以上前には外壁でも使用されていたため、元の施工にアクリル系コーキングの使用が発覚した場合には、外壁の塗装メンテナンスの際に全面的に打ち替えすることをおすすめします。
シリコン系コーキング
シリコン系のコーキング材は撥水性や耐熱性に優れており弾力性も高いため、キッチンやバス・トイレなどの水まわりやタイルの目地、ガラスの固定などに使用されています。
施工後の柔軟性が良く、耐久性も期待できますが外壁塗装の際には使用を避けるべき材料です。なぜなら、シリコンの高い撥水性のため塗料が付着しなくなるためです。使用する場合は雨漏りなどの応急メンテナンスに限られます。
ポリウレタン系コーキング
ポリウレタン系コーキングは、土木構造物や基礎などのコンクリート構造物の目地やひび割れの補修に多く使用されています。
低価格の割に耐久性がありますが、直射日光にさらされて紫外線に当たる環境では劣化しやすいため注意が必要です。
外壁塗装の際に使用する場合は、ポリウレタン系コーキングの上に塗装を乗せてコーキングを保護するように施工するのがポイントです。
変成シリコン系コーキング
外壁工事で現在主流となっているのが「変成シリコン系コーキング」です。シリコンという名が付いていますがシリコン系コーキングとは別物で、主成分はポリエーテル樹脂です。
シリコン系コーキングよりも紫外線に対して耐久性があり、外壁との接着性も良好です。コーキングの上から被せて塗装が可能なため、外壁の塗装メンテナンスにも最適なコーキング材といえます。
また、有機溶剤を含まないため環境にも優しく、施工時に近隣の迷惑にもなりにくいでしょう。
外壁塗装の際には、コーキング材と塗料が反応して黒ずんでしまう「ブリード現象」を避けるために「ノンブリードタイプ」の変成シリコン系コーキングの採用をおすすめします。
コーキングの寿命
外壁に使用されるコーキング材の耐用年数は、コーキングの種類や建物の立地によっても違いますが、概ね10年と覚えておきましょう。
外壁コーキング材の主な劣化要因は直射日光による紫外線です。同じ建物でも外壁の面や周辺環境によっても劣化度合いが異なることに注意が必要です。
下記に、それぞれのコーキング材の特徴と耐用年数をまとめましたので参考にしてください。
種類 | 特徴 | 適した用途 | 耐久年数 |
アクリル系コーキング | 安価であり水性で扱いやすい | 内装 | 5~10年 |
シリコン系コーキング | 耐水性と耐熱性に優れている | 水周り | 10~15年 |
ポリウレタン系コーキング | 弾力性と耐摩耗性に優れている | コンクリート | 15~20年 |
変性シリコン系コーキング | 上から塗装可能で耐候性・耐水性共に優れている | 外壁 | 10~15年 |
コーキングの劣化を判断するポイント
外壁のコーキングは、直射日光にさらされて紫外線の影響により劣化するだけでなく、気温の寒暖差による収縮を繰り返し弾力性が失われていきます。経年とともに劣化したコーキングは防水性が徐々に低下し、雨水が外壁の裏側に回って雨漏りの原因となります。
コーキングの劣化を判断するポイントは次の3つです。これらの症状を発見した場合は、早めに専門業者に点検を依頼することをおすすめします。
✅肉やせ
✅ひび割れ・亀裂
✅剥離・脱落
肉やせ
外壁の目地やサッシ周りなどのコーキングが本来の位置よりも引っ込んでしまっている状態を「肉やせ」といいます。
肉やせはコーキングの弾力性が失われて硬化しつつある状態で、そのまま放置するとひび割れや脱落につながります。
ひび割れ・亀裂
コーキングにひび割れや亀裂が生じている場合は、劣化が進んでいるサインです。ひび割れや亀裂は、最初は小さくても、時間の経過とともに拡大していきます。放置すると、そこから雨水が浸入し、雨漏りや建物の腐食などの原因となります。
剥離・脱落
劣化が進行して弾力性が無くなったコーキングは、やがて接着面から剥がれ落ち脱落します。そのような状態になるとコーキングの防水性能は期待できず、建物にとっては非常に好ましくない状態です。早期にコーキングの打ち替えなどの修繕が必要でしょう。
コーキング修繕工事の施工方法
劣化したコーキングの修繕工事にはいくつかの施工方法があります。外壁塗装をする際には、コーキングの劣化状況を把握した上で適切な工法を採用することがポイントになります。
ここでは、外壁塗装におけるコーキング修繕の代表的な方法とそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
増し打ち・打ち替え
コーキングの修繕方法には「増し打ち」と「打ち替え」の2つの工法があります。
コーキングの増し打ちは、肉やせした既存のコーキング材の上に新しいコーキング材をかぶせて既定の厚さを回復する工法です。既存のコーキング材にまだ十分な弾力性があり、劣化の程度が軽い場合にはコストと工期の面で有利な工法といえます。
それに対してコーキングの打ち替えは、既存のコーキング材を除去してから、新たにコーキング材を充填する工法です。既存のコーキング材がひび割れたり剥離しているなど、劣化が著しい場合には打ち替えを推奨します。
増し打ちよりもコストと工期が掛かりますが、防水性能は確実に回復します。
打ち替えの場合でも、既存コーキングの除去が不十分だと新たなコーキングの接着が不十分になり、すぐに剥離してしまうこともあります。打ち替えをする場合は、カッターや機械工具を使用して確実に古いコーキング材を除去するようにします。
先打ち・後打ち
外壁塗装の工程の中で、コーキング材を施工するタイミングによって「先打ち」と「後打ち」の2つの方法があります。
先打ちは、外壁塗装を施工する前にコーキング材を増し打ちしたり打ち替えたりする方法です。
コーキングが硬化した上から塗装をかぶせるため、コーキング材の表面を劣化の原因となる直射日光による紫外線から保護することができます。そのため、コーキングの劣化の進行を遅らせて長持ちさせる効果が期待できます。
また、コーキング材の上から塗装することでコーキングの表面も外壁と同じ色になるため、つなぎ目が目立たず外観もスッキリとするでしょう。
それに対してコーキングの後打ちは、塗装を施工した後に目地部にコーキング材を充填する方法です。外壁塗装工事とコーキング工事を別々の業者に発注する場合には後打ち工法が採用されることが多くなります。
新築の場合は後打ち施工が基本ですが、外壁の塗装メンテナンスの際には先述のコーキングの表面保護というメリットから、先打ち工法が有利です。
二面接着・三面接着
コーキング材は、その接着する面の数によって「二面接着」と「三面接着」の2つの方法があります。
二面接着とは目地に充填したコーキング材が底には接着せず両側の面にのみ接着する方法で、コーキングの弾力性を最大限に発揮させる基本的な施工方法です。
それに対して三面接着は、コーキング材が底面と両側の面に接着する方法で、より高い防水性や気密性を確保できます。ただし、コーキングが拘束されるため外壁材の動きに追随できずにひび割れが発生する恐れがあります。
三面接着を採用する箇所は、比較的動きの少ないアルミサッシ周りなどに留めるのが賢明でしょう。
まとめ
本記事では外壁塗装工事と同時に実施されることの多いコーキング工事について詳しく解説してきました。
外壁の表面が塗装で綺麗に維持されていても、コーキングが劣化していると建物の防水性能は大幅に落ちてしまい、建物寿命を縮めることにつながりかねません。
池本塗装では外壁塗装前にコーキングの劣化点検も実施して、お客様に現状を報告いたします。コーキングの材料と補修方法について丁寧に説明して、お客様もご納得の上での工事を心掛けています。
外壁塗装およびコーキングの点検および見積は無料ですので、池本塗装にお気軽にご用命ください。
〈施工事例〉